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自筆証書遺言保管制度の新設と遺言書の方式緩和

自筆証書遺言保管制度の新設

平成30年7月6日、法務局における遺言書の保管等に関する法律が成立し、法務局において自筆証書遺言を保管する制度が新たに設けられることとなりました。

新たな制度では、予め保管申請しておくと、遺言者が死亡した後に相続人が法務局において、遺言書保管事実証明書及び遺言書情報証明書の交付請求、遺言書原本の閲覧請求をすることができるようになります。また、相続人の1人に遺言書情報証明書を交付した場合または遺言書の閲覧をさせた場合には、法務局から他の相続人等に遺言書が保管されている旨が通知されることになります。

 

紛失・改ざんなどのリスク

自宅で自筆証書遺言を保管した場合、紛失・亡失の可能性がありますし、遺言書の内容によっては相続人による廃棄、隠匿、改ざんの恐れがあります。実際、その内容に不満を持った相続人が意図的に廃棄する、内容を書き換えるといったことにより相続手続きや相続税申告に支障が出るケースも見受けられます。

 

相続手続きと相続税申告をスムーズに

相続税の申告は被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行うことになっています。ところが、相続財産の把握や財産分割には思いのほか時間がかかるものです。自筆証書遺言があった場合でも家庭裁判所で検認という手続きが必要になり、最低でも1か月はかかるのが現状です。保管制度を利用すると検認は不要ですし、自筆証書遺言で財産目録と遺言者の意思表示が分かりますので、相続手続きと相続税申告書作成がスムーズにできると期待されます。なお、保管制度の施行日は今後政令で定められることになりますが、施行前には法務局に遺言書の保管を申請することはできませんのでご注意ください。

 

遺言書の方式緩和

現民法では自筆証書遺言は全文を自筆する必要がありますが、民法改正によりパソコンで作成した財産目録、通帳のコピー、登記事項証明書等の自書によらない財産目録を別途添付することが可能となります。

財産目録には遺言者の署名押印を行うことで偽造を防止します。この改正は平成31年1月13日から施行されます。

固定資産税評価額 家屋の時価評価の適正性

家屋の固定資産税評価替えの方法

家屋の固定資産税評価額算定の為の時価評価の手法は、再建築価格に経年減価率を乗じて時価を求めるとの計算構造です。

減価が緩慢で打ち止めがあることに問題がありそうですが、それよりも、本当は、再建築価格を求めるという方式にこそ重大な問題があります。

 

問題は再建築価格を求めるという方式

再建築価格の求め方は、既往年に算定されている再建築価格に再建築評点補正率(今年の場合は木造1.05、非木造1.06)を乗じ、さらに物価水準による補正率(今年の場合は木造0.9~1.0〈8大都市は1.0〉、非木造1.0)を乗じ、そして設計管理費等による補正率(今年の場合は木造1.05、非木造1.10)を乗じて求めます。

 

時価を求めるという建前のまやかし

減価の手続きで減算する前の金額を絶えず変化させて、減算後の金額が低くならないような方式にしているのです。

実際、経年減価補正率表の減価率よりも、価格を増大させる上記の各補正率の方が大きく、これらはすべて掛け算式の各掛け率に該当するので、評価替え計算の実態は、自ずと評価額上昇をもたらす構造となっています。

 

責任逃れとめくらましの体制

各補正率は、すべて総務省が決定し、その評価の手法は総務省の「固定資産評価基準」に拠るべきものとされていますが、土地の評価基準が40頁なのに対して、家屋の評価基準は276頁もあります。「評価基準」の家屋部分は極めて詳細複雑です。

従って、各自治体の評価の現場では、各補正率や評価の手法には責任を持たなくて済む構図になっており、かつ、家屋の「評価基準」は複雑難解に仕立てられています。

 

評価の内容を公開していない

土地の固定資産税路線価は公表され、土地の評価額についての適正度は確認し易くなっているのに、家屋については、再評価額増のときは、評価額据置きとし、さらに納税通知書等にその事実を開示しません。

評価方式に自信があるなら、評価増となったので増税と伝えたらよいし、その前に、評価増となっている計算事実を公表すべきです。

固定資産税評価額 家屋の減価と時価評価

家屋の評価替えもあるんですよ

家屋の固定資産税評価額は評価替えされることなく、据え置かれることになっている、と理解している人は多いかと思います。

でも、家屋も3年毎の基準年度とされる年に全国一斉に評価替えされます。今年は新基準年度の年です。

評価替えされるのは、時価課税するとの法律の規定があるからです。

 

税額に直結する家屋の評価額

家屋の固定資産税の課税標準は固定資産税評価額そのものです。その評価額は、各年の1月1日の価格とされ、それは「適正な時価」とされています。

家屋の「適正な時価」とは何か、これについてあまり議論がありません。土地と異なり公示価格のような公的指標がありません。そのため、家屋評価の「適正な時価」概念は曖昧です。

 

「適正な時価」の求め方

固定資産税の一つである償却資産税も時価課税とされていますが、これについては、取得価額から減価償却額を控除した金額を以って時価としています。

土地については、売買実例価格を集約することを原理とする公示価格に基礎を置いています。

木造家屋については、売買実例価格を基礎にしたのでは、急速に無評価化となる実態があるので、これは採用されていません。

家屋の時価評価は、1月1日の時点で、その家屋を、その場に新築し直した場合に必要とされる再建築価格を求め、この価格から経年損耗減価の額を差し引くという方式が採られています。

 

経年減価補正率の適正性は

再建築価格に乗ずる経年減価補正率を見ると、木造の場合、最初の1年経過後の1月1日の時に2割減価し、その後の25年間で6割減価し、その後27年以降は減価させない、としています。もし、1円まで減価償却をするとした場合、最後の償却率を維持したとして、木造の耐用年数は47年、非木造の耐用年数は156年です。

木造27年、非木造45年以降のところで減価処理は0.2で打ち止めとなります。

時価課税という法律規定の原理を支える適正時価の評価方式は果たしてこれでよいのか、疑問です。

タワマンと配偶者終身居住権

タワーマンション節税退治の実効性

タワーマンション節税退治として法改正されたのは、固定資産税評価額の階層間調整だけでした。

これでは、野放し状態ではないか、国税当局には、タワマン節税退治をする気がないのだろうか、安倍内閣の景気対策にそぐわないということで政治的圧力があるとか、相変わらずの忖度が機能しているのかとか、穿った見方も出てくるところです。

 

総則6項の発動を予定している?

国税には、財産評価通達の総則6項という切り札があり、これを発動して、著しく不当な評価になるとして、タワマンについて、評価通達適用を排除できるのだから、タワマンの相続税対策利用はリスクが大きい、と宣伝もされています。

しかし、総則6項は国税庁長官の指示を受けて評価するので、実際に、いちいち長官指示を仰ぐような作業は滅多にはできません。総則6項が発動されるのは稀なのです。相続直前取得又は相続時精算課税贈与のタワマンをその後短期間で譲渡しているようなケースに限られています。

 

総則6項の代わりになるもの

また、切り札の一つに、負担付贈与通達があります。これには、「負担付贈与又は個人間の対価を伴う取引により取得したものの価額は、当該取得時における通常の取引価額に相当する金額によって評価する」と書かれています。

これに拠って、親族間の相続税評価額での譲渡に対し、通常の取引価額との差額に贈与税を課し、譲渡損があれば、これを無いものとみなす、との対応をしています。

 

配偶者終身居住権改正法の施行

配偶者居住権に関する改正民法の施行は公布後2年以内となっています。ただし、この権利は、居住権という債権についての特別な規定として創設されたものです。

債権は、契約自由の原則により、当事者間で自由にその内容を定めることができます。従って、改正法施行前でも、契約により、配偶者終身居住権のようなものを実質的に実現することは可能です。

終身居住権が第三者に対抗できるような法律構成になるようにして登記すれば、通常の取引価額は自ずと低下し、上記の負担付贈与通達適用などへの対抗力を持つことになります。

新しい権利 配偶者終身居住権

新しい法定された権利の創設

民法が改正され、配偶者終身居住権が創設されました。被相続人の配偶者が自宅に住み続けることができる権利で、高齢化が進む中、残された配偶者の住居や生活費を確保し易くする、というのが狙いです。

子が自宅の所有権を相続し、被相続人の配偶者が終身居住権を相続する、というのが最も典型的な予想ケースとされています。

所有権が第三者に渡っても、そのまま自宅に住み続けることができる、という排他的権利です。

 

評価額と権利の性質

居住権の評価額は平均余命などを基に算出され、不動産の価額は、終身居住権の価額と終身居住権付不動産の価額とに分割されることになる、と法務省法制審議会民法部会で審議されていました。相続税評価額がどうなるかは未定ですが、法制審の審議を承けたものになると思われます。

終身居住権の譲渡資産性は弱そうですが、

登記されることを前提にしているので、債権でありながら、借地権のような物権的性格を強く持ちそうです。

 

所得税への影響

相続により承継する終身居住権と終身居住権付不動産のそれぞれが、譲渡の局面に立ち至った場合は、それらの承継取得原価は、借地権と底地の関係のように、各評価額の比で按分されることにならざるを得ません。ただし、それには、借地権の法律政令の規定のような終身居住権に係る新たな規定の創設が必要です。

 

終身居住権の一身専属性

終身居住権は一身専属権として死亡と共に消滅するものです。その自然消滅によって、終身居住権付不動産は何の制限もない不動産に生まれ変わります。その時に、終身居住権の消滅益を認識すべきか、終身居住権に対応することになる承継取得原価はどのような扱いになるか、なども必然の検討テーマになります。

 

自然消滅借地権が参考になる

自然消滅借地権の場合は、借地権の消滅益を認識せず、借地権の取得価額は自然消滅になります。これに準ずるとすると、終身居住権の消滅益は認識せず、それに対応している取得価額も自然消滅となり、誰にも承継されません。

相続税の改正と一般社団法人

一般社団法人等を使った相続対策とは

「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」が施行された2008年以降、一般社団法人の設立が容易になりました。

そこで、一般的な方法としては次のような相続対策が急増しました。

①一般社団法人を設立する。

②そこに被相続人所有の不動産や自社株を移動します。

③相続人を理事又は理事長とする。

②の段階で問題となったのは、不動産や自社株を時価で売却した場合被相続人にかなりの譲渡所得が発生したり、高額な貸付金や金銭が手元に残ったりすることでした。

しかし不動産や自社株は所得税の分離課税であり、課税は20%強で済みます。また高額な貸付けは不動産収益や配当での返済や、親族理事への報酬により赤字にして債務免除することも可能でした。

更に非営利法人として認められた場合は、寄附や贈与も課税対象から外れていました。そしてこのようにして一般社団法人に移された財産は、相続財産から完全に除かれておりました。

 

今回の改正では

同族関係者が理事の過半数を占める特定一般社団法人等については、同族理事(理事でなくなった日から5年を経過していない者を含む)が死亡した場合は、その特定一般社団法人等を個人とみなして、同族理事の数で等分した当該特定一般社団法人等の財産を、死亡した理事から遺贈により取得したものとみなし相続税を課税するというものです。更に既にある一般社団法人等についても、特定一般社団法人等に該当すれば、平成33年4月1日以後の理事の死亡については適用するというものです。

 

対策としては次の事が考えられます

①被相続人対象者が理事を辞め5年を超えて長生きすること。

②同族理事の数を50%以内とする。と同時に被相続対象者は3年を超えて長生きすること。

③①②ができない時は逆に同族理事の数を増やし等分財産を少なくする。

しかし特定一般社団法人等に該当しなければ従来通りですから、これで相続対策がなくなるとは思えません。

地上げと買換え

地上げとは 

バブル時代に「地上げ」という土地の価格を上げる手法がありました。「地上げ」の本来の意味は土地の有効活用を目的として土地を購入することを言います。

「地上げ」というとヤクザをイメージしますが、都心の再開発に貢献した面もあります。経済ヤクザのことを「企業舎弟」と言います。税務調査などが入ると社会的に認知されたと思ってか、喜んだそうです。

また、都心の土地を売って郊外に大きな土地を購入した年配の方などの中には、「社会に貢献した」と言って自慢している方もおりました。

 

地上げすると何故価格は上がるのか?

一例を挙げてみますと、一般的には余程の問題がなければ、大通りに面した土地の方が価値は高くなります。

キャプチャ1

このままでは坪150万円と坪200万円の土地は、いつまでたっても価値は変わりません。そこで、この4つの土地を「地上げ」して1つの土地にするとマンションやビルを建てられる大きな土地になるので、全ての土地の価格が坪500万円又はそれ以上になることもあります。

キャプチャ2

 

買換資産は要注意

バブルの時に地上げ等で都心の土地を売却し買換えの特例により納税の猶予を受けた方やその相続人は、既に買換えの記憶が曖昧です。資料も紛失している場合がほとんどです。申告を頼んだ会計事務所にも既に資料がない可能性があります。納税の猶予は永久に続きます。「現在の所有不動産が買換え特例を受けたものかもしれない」と心当たりがある方は、この機会に残された資料等を一度整理されてはいかがでしょうか?

遡及日付官報による公布施行の問題点

今年の改正税法の公布・施行の日

今年の改正税法は、3月28日に国会通過し、余裕があったはずなのですが、その後の、御名御璽を得るための天皇への奏上、法律番号を付しての主任大臣と内閣総理大臣の連署、閣議決定、官報の印刷、の何が滞ったのか不明ですが、3月中に発行された官報での公布はありませんでした。

 

Profession Journalで案内

3月30日、税専門の出版社、清文社の関連会社が運営するホームページProfession Journalに、3月31日(土)の官報にて公布予定であるが、官報の販売は4月2日(月)とのこと、との記事がありました。

インターネット官報も、公開されたのは、4月2日の午前零時を過ぎてからでした。日付は3月31日で、特別号外(第7号)となっていました。遡及日付でした。

 

公布の日はいつと解されるか

昭和29年と古い話ですが、覚醒剤取締法の改正法が公布即日施行された日の午前9時ごろ、改正法により重罪となる行為をした人がおり、改正前後のいずれの法が適用となるか争われた刑事訴訟での上告審の最高裁判所は、国民が官報を最初に閲覧・購入できる状態になった時に公布があったといえるとする判断を示して、それを東京の官報販売所において閲覧・購入ができた時刻である犯行日の午前8時30分とし、改正後の重罪適用を可としました。

 

公布日・施行日の税法の定め

国税通則法の期間の定めの原則は初日不算入で、期間開始が午前零時からの時は初日算入となっていますので、改正税法の施行日の前日までに公布しておくというのが、従来だったと思われます。

4月2日午前9時が公布日時とすると、4月1日と2日が改正税法未公布未施行期間となると解することになりそうです。

 

不利益不遡及の税法原則への抵触

税法の遡及適用は可なれど、それは納税者有利規定に限られ、不利益規定に関しては遡及不適用です。この3月31日で日切れになった法律規定に交際費があります。

この規定は、法律の定める期間内に開始した事業年度の交際費の額に対する課税の規定です。しかし、改正新法が4月3日から適用なのだとすると、4月1日開始事業年度の交際費に対して課税できるのか、疑問が生まれてきます。

物納制度の財産順位が変更されました

相続税の物納制度とは

国税は金銭で納付する事が原則ですが、相続税については延納(税金の分割払い。ただし利子がかかる)によっても金銭で納付することを困難とする事由がある場合には、納税者の申請により、その納付を困難とする金額を限度として一定の相続財産による物納が認められています。

ただし物納することのできる財産には「順位」があり、1位の財産を保有していた場合は、2位3位の財産より先に物納にあてなくてはなりません。

 

物納にあてることのできる財産順位改正

現在の物納にあてることのできる財産順位は、

第1位 不動産・船舶・国債証券・地方債証券・上場株式等

第2位 非上場株式等

第3位 動産

となっています。平成29年4月1日から、以前は第2位だった上場株式等が第1位に格上げされています。

 

価格変動リスクを避けるための改正

上場株式等は価格変動リスクが高く、さらに相続の遺産分割協議等が終わるまで、譲渡しにくい実態があります。上場株式等の物納が過去の財産順位第2位であると、相続時から申告期限までの10か月の間に、急激に価格が下がった場合、納税資金が確保できなくなる上に、不動産等の上位の財産があるため物納にも使用不可、という事態もありました。

今回の改正によって、上場株式等の物納にあてることができる財産順位が1位となったため、相続時点の時価(または3か月間の平均額)が納める資産の価値としてみなされ、大幅な下落があった場合の救済措置として利用できるのです。

 

納付を困難とする金額でないと利用不可

ただし、最初に書いた通り「延納でも納付を困難とする金額」がある場合に限り物納制度が利用可能です。納税資金がある場合は活用できない可能性が高いので、ご留意ください。

相続税の延納制度

相続税は条件付きだが分割払いができる

国税は、金銭で一括納付することが原則ですが、相続税額が10万円を超え、金銭で納付することを困難とする事由がある場合には、納税者の申請によりその納付を困難とする金額を限度として、担保を提供することにより、年賦で納付することができます。

この制度を「延納」といいますが、要件があり、担保の提供が必要であり、利子税の納付が必要となります。

 

延納の要件は?

以下のすべての要件を満たす場合に、延納申請をすることができます。

①相続税の納期限までに、延納申請書を提出すること

②相続税額が10万円を超えること

③一度に金銭で納付することが困難な理由があること

④延納税額及び利子税の額に相当する担保を提供すること

ただし、④の要件は延納税額が100万円以下で、延納期間が3年以下である場合は必要ありません。

 

担保の種類は様々

延納の担保として提供できる財産は、国債地方債社債・有価証券・土地建物立木・自動車船舶機械・財団等様々です。また、保証人の保証でもかまいません。ただし税務署が延納申請者の提供する担保が適当でないと判断すれば、その変更を求める場合があります。

 

延納期間と利子税の仕組みは複雑です

延納期間は原則5年ですが、相続財産に占める不動産等の価額の割合や相続財産の内容により異なります。利子税の計算は、不動産等の割合によって決まる「延納利子税割合」と年によって変動する基準「延納特例基準割合」を用いているため、利率が一定ではありません。

相続税額にもよりますが、利子税だけで高額となる場合もあるので、内容によっては銀行融資を受けて一括納付した方が有利になる可能性もあります。また、延納額を繰り上げて納付すれば支払うべき利子税は下がるので、対策を検討しましょう。

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