悩ましい女性の年金問題

年金制度は世帯単位から個人単位へ

 日本の年金制度はもともと官公庁や大企業の福利厚生として、雇用する世帯主とその家族の老後や障害者の生活保障という趣旨で世帯単位の設計になっていました。  厚生年金・共済組合の被用者保険は世帯主の年金で夫婦2人が生活できるような給付水準として作られてきました。他方、国民皆保険実現のために被用者(会社などに雇われている人)以外を対象とした国民年金は個人単位の強制加入となっています。

 1985年以前は被扶養配偶者は任意加入制度がありました。国庫補助金も付き、当時専業主婦の7割が加入していたといいます。しかし世帯主の年金と合わせて過大になる、任意加入していないと離婚した場合は配偶者が無年金になる等と問題の指摘があり、被用者の配偶者も国民年金の強制加入者となり、3号被保険者制度ができました。国民任意加入制度は廃止となりましたが、今では税制が優遇されている国民年金基金やiDeCoも厚生年金等の補完的機能を持っています。

年金の負担と給付の公平性は

 単身者や共働きの配偶者は同じ賃金額であれば専業主婦の配偶者と同じ保険料を負担しています。世帯主の配偶者の内助の功のコストを他の被保険者の共同のコストであると考えると制度の疑問がわいてきます。専業主婦世帯の賃金は夫婦共同で稼いだとするならば第1号被保険者として自己負担するのが妥当にも見えます。

 2022年10月からの改定で101人以上の被保険者がいる事業所に週20時間以上働くと社会保険の加入対象者となり、2024年10月からは51人以上の事業所でも対象になります。厚生年金の保険料は給与に連動するので賃金が低い場合、国民年金よりも保険料が安くなることがあります。国民年金より安い保険料で将来厚生年金も受けられるのです。事業主負担があるからこその違いなのです。一方、従業員5人未満の個人事業主に雇われている人達は2019年で504万人いますが強制でないため厚生年金に入っていません。

また、自営業などの妻は被扶養者でも国民年金保険料支払い義務があります。ともあれ、制度の矛盾や負担の公平性がぶつかり合いバランスをとるのは難しい状況です。


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