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コラム
2024.11.29

遺言書、遺産分割協議書とは?|目的や書き方を解説

家族が亡くなった際「遺言書に従い遺産分割を行う」場合と「相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産分割を行う」場合があります。

今回は、遺言書、遺産分割協議書をなぜ作成するのか、その作成方法を解説します。

遺言書とは亡くなる前に意志や想いを残すもの

遺言書は、自分の財産を誰にどのように残したいか、自分の意思や想いを示すものです。遺言書は2種類あり「自筆証書遺言」「公正証書遺言」があります。それぞれについて解説します。

遺言書の効力

遺言書があったとしても、法定相続人で話し合って全員の同意が得られれば、遺言書と異なる割合で分割することもできます。このような場合は、遺産分割協議書の作成が必要です。

自筆証書遺言

自筆証書遺言は遺言者が自筆で記載する遺言書のことです。紙、ペン、印鑑があれば手軽に遺言書を作成できる方法です。
正しく作成していないと遺言書が無効になることや、自宅に保管していると紛失や盗難、偽造や改ざんのおそれ、発見されない場合もあります。

自筆証書遺言の書き方

誰に対してどの財産を相続させるか、具体的な内容を記載することが重要です。あいまいな内容では効力が認められないため、財産の内訳や割合も細かく記載する必要があります。

自筆証書遺言のルール

自筆証書遺言のルールは、以下の3点です。
①遺言者本人が自筆で記載すること
②遺言者の署名、押印があること
③作成した日付(年月日)があること

①遺言者本人が自筆で記載すること

遺言書の本文をパソコンなどで入力、印刷をした場合、自筆証書遺言本来の目的が果たせません。保管用にコピーをしておくことは可能ですが、原本しか効力はありません。
本人以外(配偶者や子ども)の代筆も認められないため、すべて自書しなければなりません。

②遺言者の署名、押印があること

遺言者本人の署名、押印が必要です。どちらか一つでも確認できない場合、効力が認められず、遺言書の内容がすべて無効になります。
遺言者が特定できないペンネームも効力がないため、特別な理由が無ければ戸籍上の氏名を記載します。
印鑑は実印のほか、認印や拇印でも認められます。

③作成した日付(年月日)があること

遺言書の不備で一番多いのが、作成日の記入です。年月日を正確に記載し、作成した日を特定させる必要があります。
例えば2024年10月吉日のような表現は無効となるため、正確に日付を記載します。
有効な遺言書が何通もある場合、新しい日付が有効となります。

自筆証書遺言の注意点

①フォーマット、紙、ペンの種類の指定はない
②訂正や修正には厳密なルールがある
③保管方法に特段の定めはない」

①フォーマット、紙、ペンの種類

特にフォーマット、紙、ペンの種類の指定はありません。
記述の順番に決まりはないため、必要事項に漏れがないよう確認しながら書き進めます。

②修正のやり方

記載内容を間違えた場合、変更したい場合は二重線で消した上に押印し、新しい内容を近くに記載します。
訂正や修正にも厳密なルールがあるため、修正内容が適切であっても認められない場合があります。

③保管方法

保管方法に特段の定めはありませんが、多くの場合、封筒に入れ、テープやのり付けをし、保管します。表書きも特段の定めはありません。

2020年7月から法務局にて「遺言書保管制度」が開始されました。
自筆証書遺言は、手軽かつ自由度が高いというメリットがあるものの、発見されない、改ざんされる可能性があるデメリットもあります。

遺言書保管制度は、法務局が遺言書を保管するので、確実かつ亡くなった場合、希望者には相続人など(指定可能)に通知をするサービスもしています。手数料は1通3,900円で、更新手数料も不要です。
詳しくは法務省ホームページをご覧ください。

 

公正証書遺言

公正証書遺言は公証役場で証人立ち合いのもとで作成する遺言書です。
公証人が作成するので、無効になる恐れがありません。原本が公証役場に保管されます。文字が書けない人でも遺言書を作成することができます。

公証人に依頼するため、費用がかかること、2名以上の証人の立ち合いが必要です。

公正証書遺言作成の流れ

公正証書遺言を作成するための流れは、以下のとおりです。

①遺言書の原案を作成する
②必要書類を集める
③証人の依頼をする
④公証人と打合せする
⑤公証役場で遺言書を作成する

①遺言書の原案を作成する

公正証書遺言書を作成する時には、何を相続させたいのか、内容を決める必要があります。大きくは現預金、不動産、株式、生命保険などが挙げられます。誰に何を相続するかを決め、一覧にします。

②必要書類を集める

必要書類は以下のとおりです。

・遺言者の印鑑証明書
・遺言者と相続人の続柄がわかる戸籍謄本と住民票(本籍記載)
・相続人以外に遺贈する場合は、その人の住民票(本籍記載)
・財産に不動産がある場合は登記事項証明書、固定資産評価証明書
・財産や相続人を書いた一覧メモ
・遺言執行者の名前、住所、生年月日を記載したメモ(必要な場合)
・証人予定者の名前、住所、生年月日、職業(証人を依頼済みの場合)

※遺言内容によって必要書類が変わりますので、必ず公証人にご確認ください。

③証人の依頼をする

公正証書遺言を作成する場合、証人が2名以上必要です。
証人は誰でもいいというわけではありません。

証人になれない人は、以下のいずれかに該当する人です。
①未成年者
②遺言者の推定相続人※
③遺産を受ける人とその配偶者・子・孫・父母などの直系血族
④公証人の配偶者、4親等以内の親族、書記、属人
※推定相続人とは、現時点で相続が発生した場合、遺産を相続するはずの人のことです。

もし、身近に証人をお願いできる人がいない場合は、公証役場で証人を手配してもらうこともできます。(日当等がかかります。)

④公証人と打合せする

公証役場に連絡し、面談予約を取ります。
細かい文言などを話し合い、法的に間違いのないものに仕上げていきます。打合せの回数は内容や公証人により異なりますが、平均1~2回となります。最後に、実際に公正証書遺言を作成する日を決めます。

⑤公証役場で遺言書を作成する

決定した作成日に遺言者と証人2人以上が公証役場に出向きます。
※健康上の理由で出向けない場合、公証人に自宅や病院に出張依頼することもできます。

当日の流れ

①遺言者が遺言内容を口述し、公証人が筆記する
②公証人が証書の内容を遺言者と証人の前で読み上げる
③ 遺言者と証人が署名、押印する
④ 公証人が署名、押印。証書が方式にしたがって作成されたものであると付記する
⑤ 公正証書遺言は原本と写しである正本、謄本の3通を作成する
⑥ 公正証書遺言の作成費用を精算する
※原本は公証役場にて保管、正本と謄本が遺言者に渡されます

公正証書遺言の費用

公正証書遺言を作成する場合、費用がかかります。費用は財産の額や受け取る人数により変わります。

財産の合計額 手数料
100万円以下 5,000円
100万円超え200万円以下 7,000円
200万円超え500万円以下 11,000円
500万円超え1,000万円以下 1,7000円
1,000万円超え3,000万円以下 23,000円
3,000万円超え5,000万円以下 29,000円
5,000万円超え1億以下 43,000円
1億円を超え3億円以下 43,000円へ5,000万円ごとに13,000円を追加
3億円を超え10億円以下 95,000円へ5,000万円ごとに11,000円を追加
10億円を超える場合 249,000円へ5,000万円ごとに8,000円を追加

参考:日本公証人連合会
※公証人が出張する場合、日当として4時間未満1万円、4時間以上2万円かかります。
※証人を依頼する場合、日当として1人1万円程度かかります。

 

遺産分割協議書とは相続財産の分割割合を示すもの

亡くなられた人が遺言書を残していない場合、法定相続人全員で話し合い、合意した内容で遺産分割協議書を作成し、相続財産を分割します。

遺産分割協議書の目的

遺産分割協議書を作成すれば、法定相続の割合と異なる分割割合で相続財産を引き継ぐことができます。

相続人全員で話し合って合意が得られれば、自由に分割割合を決められます。
遺産分割協議書の目的は、相続人全員が合意したことを書面に残して証明することです。
あとになって相続人同士でトラブルに発展しないようにするには、預貯金、不動産、株式といった財産だけでなく、借金など負の財産についても、誰がどれだけ引き継ぐかを書面に残しておくことが大事です。

また、不動産の名義を変更(相続登記)する場合や、金融機関で預金を解約する場合にも、遺産分割協議書が必要となるケースがあります。

遺産分割協議書が必要な場合

遺産分割協議書が必要なケースは、以下の場合が考えられます。

①遺言書が無く、法定相続分とは異なる分割を行う場合

②遺言書に記載のない財産があった場合

遺産分割協議書作成の流れと注意点

遺産分割協議書を作成するための流れは、以下のとおりです。

遺言書の有無を確認

遺言書がないかを探しましょう。遺言書がある場合は、原則として遺言書に沿って分割します。

相続人の確定

遺産分割協議を行うためには、協議に参加する相続人を確定させなければなりません。相続人を確定させるために、亡くなった人の出生から亡くなるまでの戸籍謄本を取り寄せて確認します。

財産の調査

相続財産は、預金や不動産など、正の財産だけとは限りません。借入金や未払金などの負の財産の把握も必要です。他にも、友人・知人などの連帯保証人となっていないかなど、保証債務の調査も忘れないようにしましょう。

遺産分割協議

相続人と相続財産が確定したら、相続人全員で遺産をどのように分割するかを決めます。相続割合は、法定相続人全員の合意が得られれば、法定相続分ではなく、自由に決めることが可能です。
※認知症の人や未成年者が相続人にいる場合は、成年後見人や特別代理人を家庭裁判所で選任する手続きが必要となり、時間がかかります。

遺産分割協議で話がまとまらないと遺産分割協議書が作成できません。遺産分割協議が相続人間で合意できない場合は、家庭裁判所で遺産分割調停を行います。それでも合意できなければ、家庭裁判所が遺産分割を決める遺産分割審判を行います。

遺産分割協議書作成

遺産分割協議で分割の合意が得られたら、遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書に決められたフォーマットはありませんが、必要な記載事項があります。

遺産分割協議書に必要な記載事項は、以下の4点です。

①亡くなられた人の氏名、死亡日、最後の住所、最後の本籍地

②相続人が分割内容に合意していること

③相続財産の具体的な内容
 預貯金の場合:銀行名、支店名、口座番号など
 不動産の場合:所在地、地番、地目、地積、種類、構造など

④相続人全員の名前、住所、実印の押印

例示

作成後、法定相続人を証明する戸籍謄本や、法定相続人全員の印鑑証明書も遺産分割協議書とともに保存しておきます。

 

まとめ

遺言書と遺産分割協議書の目的や書き方についてお伝えしました。
遺言書が有効であるかどうか、遺産分割協議書を作成しなければいけないのかなど、判断することが難しいケースもあります。杉山会計事務所ではさまざまな悩みに対するご相談を承っています。相談料は初回無料です。どんなことでもお気軽にご相談ください。

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